がんばらにゃ2012年10月号
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2012.10月号4食の安全安心を考えるVol.5食にまつわるちょっとした疑問について科学ライターの松永和紀さんがわかりやすくお伝えします。PROFILE食品の安全性や環境影響等を取材している科学ライター。京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。毎日新聞社に記者として10年間勤めたのち独立。「メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学」(光文社新書)で科学ジャーナリスト賞2008を受賞。消費者団体「FOOCOM」(フーコム)を設立し、「FOOCOM.NET」(http://www.foocom.net/)を開設した。酒を愛する夫、受験勉強中の娘とのてんやわんやの日々も楽しんでいる。松永 和紀さん生活に欠かせない食品添加物いろいろ国が安全性と有効性を確認 食品添加物の規制制度は以前に比べて大きく改善され、安全性が確保されるようになりました。豆腐、こんにゃく、油…。多くの食品に食品添加物が使われ、私たちの食卓をより安全に、より豊かにしています。 食品添加物は、国が安全性と有効性を確認した「指定添加物」(423品目)と、天然物由来の「既存添加物」(365品目)、天然香料、それに、通常は食品であり添加物としても用いられる品目があります(2011年12月末現在)。添加物の主な用途は次の4つ。①製造や加工に使う、②味や質、外見などを整える、③栄養を強化する、④保存性を高め食中毒を防止したり品質劣化を防ぐです。 たとえば、豆腐に使われるにがり。海水を濃縮し塩分を除いたもので、主成分は塩化マグネシウムです。ケーキに使うベーキングパウダーやこんにゃくを凝固させる水酸化カルシウムも食品添加物です。大豆やナタネからの油の抽出には、ヘキサンを用います。ヘキサンは最終製品の食用油にはほとんど残留しません。 また、うまみ調味料や着色料、発色剤などは味や外見などをよくします。うま味調味料の一種、グルタミン酸ナトリウムは、多く食べると頭痛や顔のほてりなどが起きると指摘され、「中華料理店症候群」と名付けられていました。しかし、この説はその後の数多くの検証研究で否定され、国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機構(WHO)による「食品添加物専門家委員会」(JECFA)も、「安全であり、一日の摂取量を制限する必要もない」と結論づけています。栄養を強化するために使われる食品添加物は、ビタミン類やミネラル類などです。 保存料は、食品中の菌の増殖をおさえ食中毒を防止します。また、サラダ用にカットされた野菜は殺菌料で洗われています。殺菌料は、食品には最終的には残存しないようにするという規定があり、使われた野菜を食べても問題ありません。先日、北海道で起きた浅漬けの腸管出血性大腸菌O157食中毒事件は、原因として殺菌料による野菜の消毒が不充分だったことが指摘されています。食品添加物は正しく使われることで、その安全性が確保され、食品を守る役割も果たしているのです。保存料、殺菌料も食品を守っている出典:日本食品化学学会編「食品添加物活用ハンドブック」より食品添加物の主な目的目的食品添加物の主な種類にがり、イーストフード、かんすい、pH調整剤など製造や加工に使う着色料、発色料、酸味料、調味料、増粘安定剤、乳化剤など味や質、外見などを整える栄養強化剤栄養を強化する保存料、殺菌料、防かび剤、日持ち向上剤、酸化防止剤など保存性を高め食中毒を防止したり品質劣化を防ぐ

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