がんばらにゃ2014年7月号
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食の安全安心を考える2014.7月号4食の安全安心を考えるVol.18食にまつわるちょっとした疑問について科学ライターの松永和紀さんがわかりやすくお伝えします。PROFILE食品の安全性や環境影響等を取材している科学ライター。京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。毎日新聞社に記者として10年間勤めたのち独立。「メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学」(光文社新書)で科学ジャーナリスト賞2008を受賞。消費者団体「FOOCOM」(フーコム)を設立し、「FOOCOM.NET」(http://www.foocom.net/)を開設した。2012年『お母さんのための「食の安全」教室』(女子栄養大学出版部)を刊行。松永 和紀さん食品が原因のアレルギー自己流の対応はダメ原因食物の割合全年齢でみると、図のように原因は卵や牛乳を含む乳製品、小麦が多いが、さまざまな食品がアレルギー症状を引き起こしている。年齢別にみると、0歳時には95%がこの3つを原因としているが、2、3歳時では65%にまで下がる。出典:消費者委員会資料「平成24年度食品表示に関する試験検査「即時型食物アレルギーによる健康被害、及びアレルギー物質を含む食品に関する試験検査」 鶏卵39%牛乳22%小麦12%ピーナッツ5%果物類4%魚卵4%甲殻類3%木の実類2%そば2%魚類2%その他5% わが子の食物アレルギー、心配している人も多いことでしょう。勝手に食事制限をするお母さんもいますが、問題を生じる場合が多く、医師との相談が必要です。アレルギーの研究は日々進んでいますので、俗説に惑わされないようにしましょう。 人の体では、ウイルスや細菌などさまざまな異物の侵入を防ぐための「免疫」という仕組みが働いています。とても微妙な調節により働いている大切な体のシステムなのですが、場合によっては調節がうまくいかなくなることがあります。それがアレルギー。異物を排除しようとするあまり、体が過剰に反応してしまうのです。 食べ物も植物や動物などからできており、人の体にとって異物です。多くの場合、問題なく消化できますが、一部の人に症状が出ることがあります。かゆみやじんましん、深刻な場合は血圧低下などのアナフィラキシーショックを引き起こし、死に至る場合もあります。 年代によっても、症状の出やすさには違いがあります。赤ちゃんは消化が未熟。そのため、食べ物に含まれるタンパク質を分解しきれないまま吸収してしまうため、アレルギー症状を起こしやすいようです。乳幼児の時期は卵と牛乳、小麦が主な原因食品。個人差が大きく、消化機能が発達すると治るケースも多いとされています。一方、食べ物を十分に消化できる年齢であっても、特定の食品で症状が出る、という患者もいます。原因となる食品は、卵、牛乳、小麦のほか、甲殻類、くだもの、そば、魚類、ピーナッツなどさまざまです。 アレルギー患者の割合が増えていることから、〝犯人〞探しがよく行われていますが、定説はまだありません。もっとも有力で研究が盛んなのは、「あまりにも衛生的な生活を送るようになって、免疫系が鍛えられなくなり、一部の人でバランスが崩れているのでは」というもので、「衛生仮説」と呼ばれています。 アレルギーへの対処法は原則として「原因食品を食べない」ということ。加工食品については、アレルギーの原因となりやすい食品を表示する制度ができています。 ただし、自己判断での食品除去はダメ。お母さんがアレルギーを恐れるあまり、自己流で牛乳や卵を子どもに食べさせず、栄養不良になるケースも出てきているそうです。必ず医師の判断を仰いでください。 ほとんどの人にとってはまったく安全な食品が、一部の人にとってはとても危険な食品になってしまう。それが、食物アレルギーです。社会が理解を深め、アレルギー患者が最適の食生活を送れるような環境を作ることが大事です。免疫系の過剰反応死に至る場合も加工食品には原材料表示制度も

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