がんばらにゃ2019年1月号
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原 料入 荷保 管加 熱冷 却包 装出 荷継続的な監視・記録℃温度・時間の管理異物の検出食にまつわるちょっとした疑問について科学ライターの松永和紀さんがわかりやすくお伝えします。PROFILE食品の安全性や環境影響等を取材している科学ライター。京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。毎日新聞社に記者として10年間勤めたのち独立。「メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学」(光文社新書)で科学ジャーナリスト賞2008を受賞。農林水産省農林水産技術会議委員、消費者委員会食品表示部会委員などを務めている。新刊は「効かない健康食品 危ない自然・天然」(光文社新書)。松永 和紀さんVol.41 食品衛生法改正により、原則としてすべての食品事業者にHACCP(ハサップ)に沿った衛生管理が求められることとなりました。事業者の負担は大きくなりますが、食中毒や異物混入などの防止に役立ち、食の安全のレベルアップが期待できます。食中毒などを防ぐためHACCPを制度化 HACCPは、食品製造において原材料の受け入れから最終製品の出荷までの各工程で、あらかじめ食中毒や異物混入などにつながる「危害」要因を予測し、対策を講じるものです。 従来、「食の安全を守る」というと、できあがった製品の一部を抜き出し、微生物や残留農薬を検査するなどして、問題がなければ「安全確認」としていました。「もっと検査を手厚くして安全を守って」という声が消費者の間でもよく聞かれました。 しかし、これは科学的な考え方とは言えません。検査では、調べた微生物や農薬のことしかわかりません。それ以外の微生物や自然由来の発がん物質などの影響は不明のままです。それに、検査対象にならなかった製品の安全性も未確認。でも、検査した食品は食べられなくなるので、検査率を上げるにも限界があります。 一方、HACCPでは工程をあらかじめ調べ上げリスクにつながる「危害」要因を予測し、対策を講じるように計画します。そのうえで、連続的かつ継続的に実践、管理を行い記録もつけて確認します。必要に応じて検査も工程に取り入れます。こうすれば、製造する製品すべての安全性を網羅して管理することができます。 このHACCPの手法はアメリカやEUでは事業者に義務付けられており、国際的に標準の衛生管理手法となっています。日本でも推進されてきましたが、大手企業(食品販売金額50億円以上)では導入率が67%に上るのに対し、中小企業(50億円未満)は29%に止まっていました(2016年)。そのため、国内でも食品衛生法により、原則として義務付けることとなったのです。食品メーカーだけでなく飲食店や販売業者など、食品に関わるすべての事業者が、衛生管理計画を策定しなければなりません。 食品の種類により製造工程で危害となるポイントが異なるので、現在はパンや漬物、豆腐、醤油などさまざまな業界ごとに、手引書が作られている最中です。たとえば、原材料の温度管理やアレルゲンの混入防止、調理器具の洗浄、手洗いのやり方などが細かく定められます。中小事業者もこの手引書に沿って計画を定め書類を作成し、常に管理し記録を取っていくことになります。 今後、3年弱の準備期間を経て制度が始まる見込みです。これまでに比べ、事業者の負担は大きくなります。昔ながらの職人技で食品作りをしてきた事業者は、意識改革を迫られるでしょう。しかし、高度な安全管理をめざして頑張ろうとしています。消費者である組合員の方々も、事業者の苦労に思いを馳せながら、食品を美味しく食べていただきたいと思います。手洗いのやり方まで細かく決め、実行する危害を予測して管理計画を作る従来は、最後に製品の一部を抜き取って検査していたが、HACCPは工程ごとに危害の要因をあらかじめ洗い出し、対策を講じることで、製造する全製品の安全性を確保する。HACCP方式と従来方式の違い出典:厚生労働省資料※県民せいきょうでは、ハーツ全店・きらめき8施設にて福井県版HACCP認証取得を進め、衛生管理に努めていますHACCP方式従来方式工程例抜取検査12369コロッケ5がんばらにゃに関するご意見、ご感想などをお聞かせください…… ganbaranya@fukuicoop.or.jp

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