がんばらにゃ2019年2月号
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食にまつわるちょっとした疑問について科学ライターの松永和紀さんがわかりやすくお伝えします。PROFILE食品の安全性や環境影響等を取材している科学ライター。京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。毎日新聞社に記者として10年間勤めたのち独立。「メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学」(光文社新書)で科学ジャーナリスト賞2008を受賞。農林水産省農林水産技術会議委員、消費者委員会食品表示部会委員などを務めている。新刊は「効かない健康食品 危ない自然・天然」(光文社新書)。松永 和紀さんVol.42 2018年に改正された食品衛生法により、食の安全を守るための規制はますます厳しくなります。とくに「健康食品」についてはリスクの懸念が高いものがあるため、特定の成分を含む食品で健康被害が起きた時にはすぐに届け出るように、事業者に義務付けることが決まりました。「健康食品」の規制も法律改正でより厳しく 健康に良いという触れ込みの「健康食品」ですが実は、健康被害がたびたび起きています(表参照)。たとえば、豊胸効果や更年期症状軽減効果がある、という宣伝で売られていたプエラリア・ミリフィカという成分を含む食品では、月経不順や不正出血などの報告が相次ぎました。この成分はホルモンに似た作用があるとされ、品質の管理や顧客への摂取指導が難しいはずなのに、多くの事業者が安易に売っていました。2017年7月までの5年間で、健康被害報告は223件に上っています。そのため、厚生労働省は2017年、事業者への行政指導や消費者への注意喚起を行っています。 しかし「時間がかかりすぎ」「事業者への対応が弱腰だ」などという批判も強く出ました。微生物による食中毒のような下痢、死亡など激しい健康被害があれば、国はすぐに対処できます。しかし、月経不順、慢性的な体調不良など、一見軽い症状に関する情報を国が迅速に集める仕組み、法的根拠がこれまでありませんでした。 そこで、科学的に懸念が高いホルモン様作用成分や植物が作る自然の毒性成分アルカロイドなどをあらかじめリストアップして「特別の注意を必要とする成分等」として定め、警戒を強める仕組みがスタートすることとなりました。 まず、「特別の注意を必要とする成分等」は、厚生労働省が審議会や食品安全委員会で専門家の意見を聞き指定します。これらを含む健康食品を製造・販売する業者は、一段高いレベルの製造・品質管理を行わなければなりません。また、製造販売後に消費者から健康被害の連絡があった際には、保健所に届け出することが義務化されます。厚生労働省が全国の健康被害情報を集約し、問題がある場合にはなるべく早く、販売禁止や消費者への注意喚起などの対策を講じます。 健康被害への対処だけでなく、懸念の高い成分をあらかじめ公にしておくことで、消費者が気軽に手を出さないようにしたい、という国の狙いもあるようです。 このほか、法律改正により輸入食品に対する規制も厳しくなります。また、一般食品を事業者が自主回収(リコール)する際に、都道府県に届け出することも義務化されます。消費者は、微生物に汚染されたり、アレルギー物質の表示への記載漏れなどでリコールされた食品の情報を、厚生労働省のウェブサイトで一元的にチェックできるようになります。 食品衛生法改正に基づき、今後さまざまな面で食の安全対策は変わります。期待しましょう。輸入食品、リコールも制度が変わる健康被害の届け出事業者に義務付け健康被害が出たり、懸念があるとして消費者に注意喚起が出された健康食品出典:厚生労働省資料 https://www.mhlw.go.jp/content/11131500/000345960.pdf年名 称宣伝文句発端・健康被害対 応2002200320042006200720092017ガルシニアアマメシバコンフリーコエンザイムQ10スギ花粉アガリクスプエラリア・ミリフィカダイエット効果などダイエット効果、便秘解消長寿、滋養強壮アンチエイジング、抗酸化効果など花粉症の症状軽減免疫量向上、抗がん作用など豊胸効果、更年期症状軽減などラットの精巣への影響台湾において200名の閉塞性細気管支炎発生海外で肝障害が多数報告下痢、嘔吐などの報告重篤なアレルギー症状発がん作用促進不正出血、月経不順などの報告あり消費者に注意喚起、事業者への行政指導暫定流通禁止販売禁止消費者に注意喚起、事業者への行政指導消費者に注意喚起、事業者へ表示指導消費者に注意喚起、事業者への行政指導消費者に注意喚起、事業者への行政指導これまで問題となった主な「健康食品」2019.2月号4

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