がんばらにゃ2016年5月号
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2016.5月号4 食品添加物に対する批判の中に、「いろいろな添加物の複合的な影響が調べられていない」という主張があります。すべての組み合わせについて調べることは不可能ですが、さまざまな科学者が多角的に検討しており、「健康影響が実際に発生する可能性は極めて低い」と考えられています。食品添加物の複合影響「可能性は極めて低い」 食品添加物は、数多くの試験で問題がないとされたものが使用を認められています。たしかに、添加物同士の組み合わせにより思いがけない重大な複合影響が出ないか、事前に調べているわけではありません。しかし、複合影響については多くの研究機関や国際機関が検討を重ねており、日本の内閣府食品安全委員会も「安全性が十分に確保されていると考えられる」との見解を示しています。 その理由は、添加物がごく微量だからです。添加物が体の中に入ると、蓄積はせず代謝や分解がすぐにはじまります。人の体の中には数十兆の細胞があり、微量の添加物が口から入って代謝分解を受けながら、たった一つの細胞の中でほかの添加物や代謝物と出会って結合したり作用し合ったり、という可能性は極めて低く無視できる、というのが科学者の考えです。 医薬品では、「この食品や薬と一緒に摂らないように」という注意があります。一緒に摂取すると効き目が強く出たり、効かなくなったりするためです。こうした経験から、添加物の複合影響に不安を持つ人がいるようです。しかし、医薬品は副作用を覚悟で大量に摂取するもので、通常、添加物の数千倍、数万倍と摂ります。食品成分はもっと大量で、添加物の数百万倍というような量を食べます。大量に摂る物質同士だと体内で結合したり作用し合い体に影響を及ぼす確率ははね上がります。しかし、添加物はごく微量なので、懸念を生じないとされるのです。 でも、納得できない人もいるかも。なぜ、科学者は「複合影響はない」と断言せず、「可能性は極めて低い」と言うのでしょう。「やっぱり起こりうるのね!」と思って当然です。 残念ながら、科学者は「ない」とは言えません。たとえば、福井で若いころに一度だけ会った人に数十年後、何百キロ離れた東京でばったり再会する可能性がない、とは言えません。でも、「やっぱりそんなことはあり得ない」とだれもが思っています。それと同じこと。微量の添加物同士も、体の中で偶然に偶然を重ねて反応することはない、とは言い切れませんが、まあほぼ、あり得ません。誠実な科学者であればあるほど、「ない」とは言わない事情もわかってあげてください。 実はこの20年ほど、食品中の天然成分同士の反応により毒性物質や発がん物質ができている事例がさまざま、わかってきました。たとえば、じゃがいもや野菜などに含まれる糖類とアスパラギンというアミノ酸は、高温調理により発がん物質アクリルアミドに変わります。食品中に大量に含まれる天然成分の複合影響については今、研究がとても活発に行われています。詳しくは7月号でお伝えします。PROFILE食品の安全性や環境影響等を取材している科学ライター。京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。毎日新聞社に記者として10年間勤めたのち独立。「メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学」(光文社新書)で科学ジャーナリスト賞2008を受賞。消費者団体「FOOCOM」(フーコム)を設立し、「FOOCOM.NET」(http://www.foocom.net/)を開設した。2012年『お母さんのための「食の安全」教室』(女子栄養大学出版部)を刊行。松永 和紀さん食にまつわるちょっとした疑問について科学ライターの松永和紀さんがわかりやすくお伝えします。ごく微量で、蓄積せず体の中で代謝分解Vol.29JUICEソーセージ酸化防止剤

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