がんばらにゃ2017年2月号
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食にまつわるちょっとした疑問について科学ライターの松永和紀さんがわかりやすくお伝えします。Vol.34PROFILE食品の安全性や環境影響等を取材している科学ライター。京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。毎日新聞社に記者として10年間勤めたのち独立。「メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学」(光文社新書)で科学ジャーナリスト賞2008を受賞。消費者団体「FOOCOM」(フーコム)を設立し、「FOOCOM.NET」(http://www.foocom.net/)を開設した。2012年『お母さんのための「食の安全」教室』(女子栄養大学出版部)を刊行。松永 和紀さん 食中毒の主な原因は細菌やウイルスなどの微生物ですが、それ以外に目立つのが「自然毒」です。フグやキノコだけでなく、植物も原因となります。なんとジャガイモも、栽培や貯蔵方法が悪ければ毒性物質が増え、食中毒事故を引き起こします。意外に身近な有毒植物に、どうぞ気をつけてください。ジャガイモでも食中毒が発生有毒植物にご注意を 春先によく聞くのが、スイセンをニラと間違えて食べてしまった、という事故です。厚生労働省によれば、2006年から10年間でスイセンによる食中毒が37件、149人の患者が発生しています。2016年春には、直売所で誤って売られ、購入して食べた人が亡くなっています。 たしかに、スイセンはニラと細長い葉が似ています。しかし、スイセンの葉には毒性物質が含まれ、嘔吐や下痢、頭痛、昏睡などを引き起こします。区別するには臭いをかぐこと。ニラのあの強烈な臭いは、スイセンにはありません。 このように、植物の中には毒性の強い物質を含むものが数多くあります。ところが、警戒感が薄い人が多く、簡単に家庭菜園で育てたり、野外で採取して食べたり販売したりしてしまうのです。2016年は、4月から6月にかけて全国で4人が亡くなり(イヌサフラン2人、トリカブト1人、スイセン1人)、福井県も注意喚起に努めました。安易に考えてはいけません。 ジャガイモの芽にはソラニン類という毒性物質が多く含まれます。さらに、ジャガイモを貯蔵している時に光に当たっていると、皮が緑色になり、この部分にもソラニン類が多くできます。また、栽培時にイモが未熟なのに収穫してしまうと、これもソラニン類を比較的多く含みます。 ソラニン類を多く食べると、腹痛や嘔吐、頭痛などを発症します。緑色になった皮の部分には、重さ100gあたり100㎎程度のソラニン類が含まれていますが、大人でも50㎎程度の摂取で症状が出るケースがあり、150㎎以上の摂取で死ぬ可能性もあるとのことです。ただし、農家は、ソラニン類の多いイモを出荷しないように気をつけており、市販の小イモも心配ありません。 実は、ジャガイモ食中毒の〝現場〞は小学校。2006年から10年間でジャガイモの食中毒は計21件発生し、患者数は411人に上っていますが、約9割が学校で発生しています。総合学習や理科などの授業でジャガイモを栽培し、収穫して子どもたちが食べた時に食中毒がよく起きるのです。 子どもは、大人に比べてソラニン類に敏感で、少量の摂取で発症しやすい、とされています。栽培時にイモが地表近くにあり光を当ててしまっていたり、未熟なイモを収穫して皮ごと食べたりしているのです。 ソラニン類は毒性が強いため、「現代に、ジャガイモが新規食品として申請されたら、認可されないだろう」という科学者もいるほど。栽培や貯蔵は、農家など専門家のアドバイスを仰いだ方がよいでしょう。芽が出たり、皮が緑色になった時には、厚めに切りとってから食べましょう。 自然は時に怖い。そのことを忘れずに、十分に注意してください。ジャガイモ事故は小学校で起きているニラとスイセン間違える事故が毎年数件種 類特 徴スイセン、ジャガイモ以外の主な有毒植物とその特徴(多く食べると、死亡するおそれもある)出典:厚生労働省資料http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/yuudoku/index.htmlバイケイソウチョウセンアサガオイヌサフラングロリオサトリカブトウルイ、ギョウジャニンニクなどと間違えやすい。症状は、嘔吐、下痢、手足のしびれなど。モロヘイヤ、アシタバなどと間違えやすい。症状は口の渇き、瞳孔の散大、意識混濁など。ギョウジャニンニクやギボウシと間違えやすい。症状は、嘔吐、下痢など。ヤマイモと間違えやすい。症状は、口や喉の灼熱感、発熱、嘔吐など。ニリンソウ、モミジガサなどと間違えやすい。食後10~20分以内で、唇や舌などのしびれ、嘔吐、腹痛、下痢などの症状が出る。2017.2月号4

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