がんばらにゃ2018年3月号
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食にまつわるちょっとした疑問について科学ライターの松永和紀さんがわかりやすくお伝えします。PROFILE食品の安全性や環境影響等を取材している科学ライター。京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。毎日新聞社に記者として10年間勤めたのち独立。「メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学」(光文社新書)で科学ジャーナリスト賞2008を受賞。消費者団体「FOOCOM」(フーコム)を設立し、「FOOCOM.NET」(http://www.foocom.net/)を開設した。新刊は「効かない健康食品 危ない自然・天然」(光文社新書)。松永 和紀さんVol.38 GAPをご存知ですか?Good Agricultural Practiceの頭文字を取ったもの。日本語にすると、農業生産工程管理です。農家が農業をする際に守るべきルールを定めています。GAPに取り組み、農産物の安全性や品質向上をめざす農家が増えています。安全で品質の高い農業をめざすGAPを知ってくださいギャップ GAPは「食品の安全性」と「環境保全」「労働者の安全」を守り、農業をしっかりと長く続けるためのものです。「食品の安全性」についてはたとえば、●農薬を適正に使用し保管する●食中毒を招く微生物の農産物への付 着を防ぐ「環境保全」は、●肥料を与えすぎず土壌や水の富栄養 化を防ぐ●廃棄物を適正に処理する「労働者の安全」は、●機械・設備の点検や整備●農薬散布時には保護具をつける…などの細かいルールを、必要に応じて自ら定め、守ってゆきます。 昔は、食品を製造するという意識が薄い農家も少なくありませんでした。たとえば、トイレを設置している農家は少なく、10数年前でさえ、畑の端で済ませてその後に手も洗わず農作業を続ける、という人もいました。農家だけでなく、日本全体がそのような衛生感覚でした。 しかし、今はそれは許されません。トイレや手洗い場を設置し、用を済ませたらしっかりと手を洗い清潔なタオルで拭いて農作業再開です。 これに限らず農作業の1つ1つに、昔とはまったく異なる注意事項があり、農家の方々は細かく守っています。しかし、注意すべき項目はどんどん増えているため、チェック漏れも起こりがち。GAPにより1つ1つの項目をリストアップして書類にまとめ、定期的にチェックすることで、確実に守ってゆこうとしているのです。 さらに、ルールをしっかりと守っていることを第三者に審査してもらい認めてもらう「認証制度」もできています。EUでは、大手流通企業などはGAP認証を取っている農家と取り引きするのが当たり前です。オリンピック・パラリンピックで選手村において提供される食事も、GAPの認証を受けた食品が用いられることになっています。認証する団体とレベルによりいろいろな種類があり、審査を受けても通常、1回では通りません。指摘を受けて改善し、やっと認証を取得できます。世界共通のルール認証である「グローバルGAP」はチェック項目が数百に上り、取得は非常に難しいとされています。 県民せいきょうのグループ企業である「ふくいレインボーファーム」は2017年11月、キャベツ、みかん、米でグローバルGAPの認証を取得しました。福井の農業のさらなるレベルアップをめざし、関係者をリードしてくれることでしょう。安全で品質の高い農産物を作るため、農家の方々の努力は続くのです。認証の取得でオリンピック提供も注意事項をリスト化定期的にチェックする内容を記録し自己点検を行い、その結果を保存。改善が必要な部分の把握、見直しを行う。産地の責任者などによる内部点検、取引先による点検、第三者(審査・認証団体など)による点検なども行う。出典:農水省の定めた共通基盤に関するガイドラインよりhttp://www.maff.go.jp/j/seisan/gizyutu/gap/guideline/pdf/guide_line_120306.pdf●農地やその周辺環境、廃棄物、資材などからの汚染防止●農薬の使用の都度、容器または包装の表示内容を確認し、守って使用●堆肥を施用する場合は、病原微生物による汚染を防止するため、数日間、高温で発酵した堆肥を使用●ほ場や施設から通える場所での手洗いやトイレ設備の確保と衛生管理の実施●貯蔵・輸送時の適切な温度管理の実施食品安全●農薬の使用残が発生しないように必要な量だけを秤量して散布液を調製●病害虫・雑草が発生しにくい栽培環境づくり●土壌診断の結果を踏まえた肥料の適正な施用●農業生産活動に伴う廃棄物の適正な処理の実施●施設・機械などの使用における不必要・非効率なエネルギー消費の節減環境保全●安全に作業を行うための服装や保護具の着用、保管●農作業事故につながる恐れのある作業環境の改善などによる対応の実施●事故後の農業生産の維持・継続に向けた保険への加入労働安全農業生産工程管理(GAP)の主な取り組み事項(野菜)2018.3月号4

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