がんばらにゃ2018年5月号
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食にまつわるちょっとした疑問について科学ライターの松永和紀さんがわかりやすくお伝えします。PROFILE食品の安全性や環境影響等を取材している科学ライター。京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。毎日新聞社に記者として10年間勤めたのち独立。「メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学」(光文社新書)で科学ジャーナリスト賞2008を受賞。消費者団体「FOOCOM」(フーコム)を設立し、「FOOCOM.NET」(http://www.foocom.net/)を開設した。新刊は「効かない健康食品 危ない自然・天然」(光文社新書)。松永 和紀さんVol.39 まだ食べられるのに捨てられてしまう食べ物が、日本では年間600万トンあまりあると推定され、「食品ロス」と呼ばれています。もったいないうえに、ごみとしての処理にはお金もエネルギーも必要。ごみにせずしっかり食べて、食品ロスをできるだけ減らしましょう。「食品ロス」を減らしたい期限表示などに注意を 食品ロスは事業者段階で339万トン、家庭でも282万トン発生しています。事業者段階では、外食の食べ残し、店での売れ残り、過剰在庫や返品などが主な原因です。家庭では、せっかく作ったのに食べ残したり、食べられる野菜の葉まで捨ててしまったり、冷蔵庫の片隅でうっかり食べられる期限を過ぎてしまったり。国民1人1日あたりの食品ロス量は、おおよそ茶碗1杯分のご飯量に相当すると見積もられているのです(農水省まとめ)。 こうした事態を改善するため、事業者は工夫しています。たとえば、「3分の1ルール」の見直し。日本は、諸外国に比べて賞味期限に厳しく、消費者が購入した後に賞味期限までなるべく長い日数を保持できるように、メーカーや卸売り業者が早め早めに小売店に渡す商習慣がありました。 消費者にとっては、購入後に長く家に置いておける仕組みでしたが、メーカーや卸売り業者の段階で、「ルールから外れた」として、まったく問題のない食品を早めに返品・廃棄することにつながっていました。このルールにより、年間1000億円以上の食品が捨てられていたと見積もられています。そのため、小売店への納品期限を延ばす取り組みが進んでいます。 また、メーカーは、賞味期限を延長する技術開発に取り組んでいます。インスタント麺の業界は、製造方法や包装を工夫し、袋麺を6カ月から8カ月へ、カップ麺を5カ月から6カ月へと延ばしました。 外食業界では、小盛りメニューの充実が図られています。客である消費者の協力も欠かせません。まずは、食べられる量だけ頼むのが鉄則。食べ残した料理の「持ち帰り」はよい方法ですが、料理を長く置いておいてから食べれば、食中毒の可能性が高くなります。消費者も持ち帰ったらなるべく早く食べる努力が求められます。 家庭でも、食材を活かし作り過ぎを避け、食品の消費期限、賞味期限にも気を配りましょう。消費期限切れは安全性に懸念を生じ、廃棄せざるを得ません。一方、賞味期限は「品質がベスト」と保証されているという意味です。賞味期限を多少過ぎたとしても、安全性や美味しさに問題が生じることはほぼありません。 消費者が店頭で「なるべく新しい商品を」と奥から、より期限の新しい商品を手に取る、という光景もよく見かけます。これも、手前の商品の売れ残りと廃棄につながりますので、やめましょう。 世界の9人に1人が栄養不足で、年間500万人の子どもが、栄養が足りず亡くなっているそうです。そんな人がゼロになるようにと願いながら、大事に食品を食べてゆきましょう。外食の「持ち帰り」は食中毒にも注意を年間600万トンが捨てられている●冷蔵庫・冷凍庫、食品棚の在庫管理をしっかり行う●買い物は計画的に●料理は食べられる量だけ作る●食材を極力活かして料理する(キャベツの外葉、大根の皮なども食べる工夫を)●消費期限と賞味期限の意味が異なることを理解し、しっかり食べる家 庭●小盛りサービスを利用するなどして、食べきれる量だけ頼む●宴会料理も、仲間で協力し合って食べる●持ち帰りの衛生管理は消費者の自己責任で。刺し身など生鮮食品は避け、衛生的な箸やスプーンなどを使って衛生的な容器に入れ、なるべく早く持ち帰り食べる。すぐに食べない場合は冷蔵庫に入れて保存し、再加熱して食べる外 食食品ロス削減に向けて、消費者にできること2018.5月号4

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