がんばらにゃ2022年4月号
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消費者庁作成のパンフレットhttps://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/quality/country_of_originVol.54.食にまつわるちょっとした疑問について科学ライターの松永和紀さんがわかりやすくお伝えします。 加工食品の原材料はどこ産か、気になりますか?使用重量が一番多い原材料については4月から、原産地が必ず表示されるようになりました。ただし、その意味を理解するには少し予備知識が必要。解説します。原材料はどこの国から?食品表示を調べましょう さて、ここからがややこしいのです。原材料として常に、一つの産地のものが使われていれば表示は簡単なのですが、実際には多くの食品メーカーが複数の産地の原材料を使用しています。消費者庁は、使用重量が多い順に国名を記載する、とルールを定めました。3ヶ国以上の原材料を用いる場合、3ヶ国目以降は「その他」と表示してもよいことにしました。 3ヶ国以上の外国の産地の原材料を用いる場合は、国名ではなく「輸入」と表示することもできます。これは「大括り表示」と呼ばれています。 さらに難しいのは、メーカーが原材料の価格や品質に応じてその時々で細かく産地を変更し配合している場合があること。日本の消費者は厳しくて、加工食品の味や品質のブレを許しません。製品価格も、原材料の実勢価格の変化に応じては変えられません。そこで、メーカーはその時々で最善の原材料を選び配合を変え、常に一定の品質、価格を維持しようとしています。 一方で、パッケージは一度に大量に印刷してコストを抑えなければならず、その都度、原産地の表示の順番を変えるのは無理です。 そこで、こうした現実に対応するルールも定められています。「豚肉(アメリカ産又は国産)」という具合です。「又は表示」と呼ばれます。この場合、豚肉はアメリカ産か国産しか使われておらず、過去の使用実績ではアメリカ産の方が国産よりも多かったことを示しています。「大括り表示」や「又は表示」現実に沿ったルールがある原材料が加工食品の場合は「製造地表示」に 原材料欄に(○○産)とか(国内製造)などと書かれた加工食品が少しずつ増えてきていたので、変化に気付いた人もいたことでしょう。2017年に食品表示基準が改正され、すべての加工食品が、最も重量の多い原材料については原産地を表示しなければならない、というルールとなりました。準備期間は5年間で、事業者は少しずつ表示を切り替えていましたがこの4月、完全義務化されました。 原材料欄には、重量順に原材料名が書かれています。一番目の原材料に「豚肉(アメリカ産)」とか「大豆(国産)」などと原産地が表示されます。 もう一つ、「国内製造」という表示もあります。原材料が生鮮品でなく加工食品の場合には、大元の産地でなく、加工食品が製造された場所を書きます。たとえば、多くのパンの原材料欄の筆頭は「小麦粉(国内製造)」となっています。 小麦は品種や産地、収穫してから何ヶ月経っているかなどによって性質が大きく変わるため、製粉会社は小麦を輸入後、国内で細かく検査して特徴をつかみ、その都度うまく配合し挽き方なども工夫して、一定の品質の小麦粉製品を製造しています。 表示の種類が多くてややこしいですね。理解し難い場合には、パッケージに書かれたお客様相談室に電話やメールで尋ねてみましょう。消費者庁も、消費者向けの各種のパンフレットを作っています。PROFILE食品の安全性や環境影響等を取材している科学ジャーナリスト。京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。毎日新聞社に記者として10年間勤めたのち独立。「メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学」(光文社新書)で科学ジャーナリスト賞2008を受賞。2021年7月より内閣府食品安全委員会委員(非常勤)。本記事は食品安全委員会の見解ではなく、個人の判断により執筆しています。松永 和紀さん

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