がんばらにゃ10月号
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 食品の製造加工に食品添加物を用いた場合、事業者は原則として表示をしなければなりません。多くの場合、パッケージの裏側に書かれた原材料欄の/の後が添加物です。この裏側の表示は「一括表示欄」と呼ばれています。これとは別に、事業者はパッケージの表側に、「おいしい」とか「素材の味を楽しめる」などと書き消費者にアピールします。近年は、「無添加」や「不使用」などの表示も目立っていました。 これに対して、事業者団体と消費者団体の双方から「実態と違う」「問題あり」という意見が出ていました。安全性の誤解を招いている、という指摘もありました。「無添加」「不使用」などと書かれていると、「こんなふうに事業者がアピールするくらいだから、やっぱり食品添加物は危ないのね」と受け止めてしまう人がいるのです。食品添加物は安全性が評価されたものが使用を許されており、決められたルール、使用方法や使用量などが守られていれば、安全の懸念はありません。残念なことに、さまざまな表示が消費者の誤認を増幅させている面がありました。 そこで、消費者庁が2022年3月、一括表示欄以外の事業者の自主的表示について「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」を策定しました。消費者の誤認を招き食品表示基準に違反する恐れがある類型10項目を示しました。 消費者は「無添加」と大きく書かれていると、「すべての添加物が無添加」と誤認しやすいことが調査でわかりました。そこで、「着色料無添加」などと、対象を明示することが求められることになりました。 添加物は天然か人工合成かで良し悪しを判断できるわけではなく、一括表示欄では天然や人工などの言葉を付けてはいけません。しかし、パッケージの表側で「合成着色料無添加」とか「化学調味料不使用」などとうたう製品がありました。これらは、実際のものより優良であると誤認させる恐れがある、とされました。 添加物は使って良い食品が決められています。たとえば、マヨネーズは製造時、調味料や酸味料などは使えますが、保存料は使えません。なのに、パッケージに「保存料無添加」と表示するのは、ほかのマヨネーズより優れていると消費者に誤認させる恐れあり、とされました。 このほか、7類型が基準違反の可能性ありとされていますので、関心のある方はガイドラインをお読みください。 一部の市民団体やメディアが「消費者が商品を選ぶ判断基準が失われた」と主張しましたが、そんなことはありません。「一括表示欄」を見れば、気になる添加物が使われているかいないかはおおよそわかります。事業者がガイドラインを守るだけでなく、消費者も表示をしっかりと見る必要があります。消費者の誤認を招く無添加表示はダメ基準違反の恐れがある類型が明確に「無添加の方が安全」は×消費者庁が表示ガイドライン策定 「無添加の方が安全」と思っていませんか?それは、科学的には間違っています。表示でそんな誤解を生むのを避けようと、消費者庁が今年、ガイドラインを作りました。詳しく解説しましょう。類型1 単なる「無添加」の表示類型2 食品表示基準に規定されて     いない用語を使用した表示類型3 食品添加物の使用が法令で    3宅     認められていない食品への表示PROFILE食品の安全性や環境影響等を取材している科学ジャーナリスト。京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。毎日新聞社に記者として10年間勤めたのち独立。「メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学」(光文社新書)で科学ジャーナリスト賞2008を受賞。2021年7月より内閣府食品安全委員会委員(非常勤)。本記事は食品安全委員会の見解ではなく、個人の判断により執筆しています。出典:消費者庁 食品添加物表示に関する情報https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/food_additive/…ハーツ・      …コープの宅配 で取り扱っています ※取り扱い状況は、変更になる場合もありますのでご了承ください。松永 和紀さんちょっとした疑問について科学ライターの松永和紀さんがわかりやすくお伝えします。食にまつわる

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