がんばらにゃ2025年1月
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 2024年元日の能登半島地震から1年が経ちました。あの時の揺れは今もみなさんの記憶に残っていることでしょう。被災地では主要道路の寸断や断水は解消されましたが、住宅やお店の再建、町の復興は未だ見通しが立っていません。 福井県では77年前に福井地震が発生し3,769人が犠牲になりました。近い将来の発生が危惧されている南海トラフ地震では、福井県で最大震度5強が予想されています。わが家の地震防災のために、地震被害が発生する仕組みを考えてみましょう。 能登半島地震では、新しい耐震基準が設けられた1981年より前の木造住宅は全壊や半壊が約5割、さらに厳しい基準が設けられた2000年より前では約3割、2000年以降は約1割と、建築年で被害に大きな差がありました。住宅の耐震性を判断する1つの目安は、適用された建築基準法という法律の年代、そしてその後の住宅の劣化の程度です。まずはみなさんの住宅がいつ建てられたのかを確認してみてください。1981年5月より前であれば耐震診断費用の補助制度を設けている自治体がありますので、詳しくはお住まいの自治体にお問い合わせください。家族の命を守る最善の対策は住宅の耐震化です。 石川県内灘町などでは液状化による住宅被害が多数発生しました。福井県でもあわら市や坂井市で液状化被害が発生しました。液状化した地盤はドロドロとした液体状になるため、支えを失った住宅は傾いたり沈んだりします。液状化しない地盤と比べて地震の揺れ自体は小さくなるため倒壊などの甚大な被害が減少する一方で、傾いた住宅に長時間いるとめまいや吐き気、睡眠障害といった健康被害を引き起こします。液状化しやすい土は、主に地下水位より下にある緩く堆積した砂(粒径0.074〜2mm)、地形では埋立地や旧河道、砂丘の末端などです。逆に言えばそれ以外の地盤では液状化の可能性が低いと言えます。国土地理院のホームページ(地理院地図)では、地形に基づく液状化の発生傾向や昔の地図を見ることができますので、わが家の危険性を確認してみてください。 石川県では発災直後に16市町で約11万戸が断水し、復旧困難地区を除くと断水解消には5ヶ月を要しました。水が使えない生活の不便さが長期間続くことは想像しがたい辛さです。 水源となる川や地下から取水された水は、市町が整備した導水管、浄水場、送水管、配水場を経て、住宅前の地中にある配水管から住民が設置した給水管を通ってわが家に届きます。末端にある給水管は細いため地盤の振動や変形に弱く、管体が折れたり継目が外れたりして断水が発生します。能登半島地震における断水の長期化は、耐震化が進んでいない上流側の基幹施設が甚大な被害を受けたことに加えて、給水管を補修する業者の不足などが原因と言われています。 想定される最大規模の地震に耐えられる管の割合を示す耐震適合率は、石川県で約38%、福井県は約44%であり、国が目標とする60%を大きく下回る数値です。地震後の復旧に多くの予算をつぎ込む前に先行投資して、水道施設の耐震化を推進することが安全・安心な社会の構築に繋がります。ただし、耐震化を進めるための財源は水道料金となりますので、今後は住民の意識改革が必要となります。福井県防災士会吉田 雅穂さん国内外で地震が発生するといち早く現地調査を行い、被害原因の解明とその対策方法を考えることをモットーに地震防災に関する研究を行っている。福井工業高等専門学校 環境都市工学科教授、博士(工学)、防災士。福井県防災士会のご協力の下防災に関するお役立ち情報を毎月お届けします42025.1月号防災Vol.8住宅の耐震性液状化現象断水くらしに役立つPROFILE能登半島地震から1年〜地震被害が発生する 仕組みを考える〜

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