がんばらにゃ2025年3月
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52025.3月号認知度が高まってきたエンディングノート。高齢の親に書いてほしいと思って子ども世代が手渡しても多くの場合、書いてはくれません。それには理由があるんです。親に書いてもらいたいと思ったら、どのようにしたらよいのでしょうか。元気が出るお金の相談所 所長マネーセラピスト安田 まゆみさん家計防衛に関するお役立ち情報を毎月お届けしますエンディングノートはなかなか書けない「書かせる」のではなく「聞き出す」ことを目的に<参考まで>福井県では、県独自のエンディングノート「つぐみ」を作成しています。各市役所、町役場、地域包括支援センターで配布し、県のホームページからもダウンロードができます。県は「将来の心の在り方を決めていく動機づけのツールとして本エンディングノートを活用することで、もしものときのために、あなたが望む医療や介護、大切にしてきたことなどを事前に整理し、残しておくことができます」としています。ぜひ手に取ってみてはいかがでしょう。シニアのライフプラン、おひとり様の老後マネー、親の介護問題や財産管理、相続など有料相談をメインに、執筆やセミナーなどで情報を発信。実父と舅を看取り、近年実母と姑を見送ったばかり。近著に「そろそろ親とお金の話をしてください」(ポプラ新書)、「もめないための相続前対策」(河出書房新社)がある。 高齢の親がいるお子さん世代の悩みの一つに、「万一に備えて親の状況や気持ちを知るためエンディングノートを渡したのに、書いてくれない」ということがあります。エンディングノートを親に手渡して「書いておいてね」と言ったところで、多くの場合書けないと思ってください。さらさらと書ける人は、人生の達人です。どうしてだと思われますか。分からなければ、まず子ども世代であるみなさん自身がエンディングノートを書いてみましょう。さらさらと書けますか。資産の一覧を書くページを見て「面倒だな!」と思いませんでしたか。終末期の医療に対する希望はどうでしょうか。そもそも延命措置についてご存じでしょうか。どのような老後を送っていくのか考えあぐねて、筆が止まってしまうことはなかったでしょうか。 「これからの人生、どうしたらよいのだろう」と考えたときに、日頃から考えていたとしてもそれを言語化して書ける人は少ないです。希望はあっても、迷い、悩み、いざ書こうと思っても言葉にならず、頭の中を堂々巡りしてしまうということはないでしょうか。子ども世代がそのような状況ですから、高齢の親であればなおさら決断も遅くなり、エンディングノートを前にしておっくうになってしまうのです。 そもそもなぜ、子ども世代は親にエンディングノートを書いてもらいたいと思うのでしょう。預貯金がどれくらいあって、民間の保険は加入しているのかという財産について確認したいのであれば、親ときちんと向き合って聞き出すことをしなければ叶いません。どのような介護を望んでいるのか、終末期の医療についてどう思っているのか知っておきたいのであれば、「書かせる」ことよりも「聞き出す」ためのヒアリングシートとして、エンディングノートを使うべきではないかと思います。 まず自分で書いてみて、何が一番大切だと思ったのかを親に話すとよいでしょう。「終末期医療のところは、自分の考えを家族に伝えておくことは大事だと思ったわ。私は延命措置はしないでほしいと思ってそう書いたけれども、お父さんやお母さんの希望を教えてもらえる?このエンディングノートに書いておけば、何かあったときにお医者さんにも希望を伝えることができるから安心できると思う」といったアプローチで、親の希望をまとめるヒアリングシートと思って取り組んでみましょう。親はひとりでは書きあぐねていたことも、子どもからの質問を聞き、考えながら話すことで、頭の中のぼんやりとしていたものがだんだんはっきりしてくるようになります。 さらにおすすめしたいのが、親の希望を付箋に書いてエンディングノートに貼り付ける方法です。考えが変わったらさっとはがして、新しい希望を書けばよいのです。「付箋に書いて貼っておくね。あとから考えが変わったらすぐはがせばいいから、安心して今の気持ちを話して」と聞いてみてはどうでしょうか。親御さんも、少しは気が楽になるかもしれません。PROFILE知っておきたい家計防衛術Vol.9親にエンディングノートを書かせてはいけない?

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