福井県防災士会のご協力の下防災に関するお役立ち情報を毎月お届けします東日本大震災の発生から既に14年が経過しました。東北地方太平洋沖のプレート境界付近での地震によって発生した津波は、沿岸域に多大な被害をもたらしました。今回は、津波への避難対応について、今一度整理したいと思います。福井県防災士会田安 正茂さん福井工業高等専門学校 環境都市工学科 教授。博士(工学)。専門は海岸工学、河川工学。□江市在住。 日本海に面した福井県では、西高東低の冬型の気圧配置が現れると「冬の日本海の荒波」と表現されるように、海岸に押し寄せる波の高さが5mを超えることもあります。このようなときには「暴風・波浪警報」が発令され、漁船も出港することはできず、海岸線へ近づくのも危険になります。しかし、波浪では海岸近くの住宅が流されるような被害が発生することはほとんどありません。 それに対して津波の場合には、「津波警報」が発令されて津波の高さが5mともなれば、海岸近くの住宅も流されて大規模な被害が発生します。同じ5mの波でも、津波の場合には海水面が5m上昇して、大量の海水が陸地に押し寄せます。さらに、津波による海水面の上昇と下降は30分から1時間程度の時間をかけて複数回繰り返して襲ってくるのです。 「津波警報」が発令された際には、海岸線から離れて高台に避難することが原則となりますが、さらに、河川への津波の□上による被害に対する避難対応も重要になります。「河川津波」と呼ばれるこの現象では、海水面が5m上昇すれば、河川内の水位も同じように5m近く上昇する危険があるからです。東日本大震災では、多くの河川で「河川津波」が発生し、堤防を乗り越えて氾濫したことによって、内陸地においても甚大な被害をもたらしました。特に、大きな河川では「河川津波」が□上する距離が河口から何十km上流にまで達することがあり、東日本大震災時の北上川では、津波が河口から49km上流まで達し、河口から12km上流の場所でも被害を生じさせました。 2024年の元日に発生した能登半島地震では、北海道から九州にかけての日本海沿岸で津波が観測され、石川県の能登町や珠洲市で4m以上、新潟県の上越市では5m以上の高さまで津波の痕跡が残されており、各地で浸水被害が発生しました。また、日本海側の津波災害では、震源域から沿岸までの距離が近いため、地震発生から沿岸に津波が押し寄せるまでの津波到達時間が短いことも分かっています。能登半島地震では津波到達までほんの数分間だったと見られています。日本海側でも津波への対策はとても重要なのです。 福井県内における津波の被害予想は、福井県や各市町のホームページで「津波ハザードマップ」が公表されています。海岸線だけでなく、「河川津波」による被害予想も記載されています。ぜひご自身の地域のハザードマップを確認し、避難場所や避難経路も把握しておきましょう。津波と波浪の違い東日本大震災時の河川への津波□上日本海側でも発生する津波被害福井県内の津波ハザードマップ62025.3月号くらしに役立つ防災Vol.10PROFILE「東日本大震災」で見た津波の怖さ
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