山口県山口市に本社を構える株式会社秋川牧園は、「秋川鶏」をはじめ、牛肉、豚肉、牛乳、鶏卵、野菜を生産し、それらの素材を使用した冷凍食品などの加工製造を一貫して手掛けています。

戦後、食の安全よりもコストを重視するようになった時代、一般的に鶏の飼育は生産性を上げるために抗生物質や抗菌剤、成長促進剤などの薬を使用することが主流となっていました。しかし秋川牧園はいち早くその状況を危惧し、安全性を追求するために薬に頼らず鶏の飼育をする「無投薬飼育」への挑戦を始めました。

「口に入るものは、間違ってはいけない」という理念のもと、薬を使わずに鶏を飼育するには鶏が健康であることが第一と考え、様々な努力を重ねてきた秋川牧園。コストを重視した養鶏では、鶏をいち早く太らせるために窓のない養鶏場で鶏の生活サイクルを奪い、昼夜問わずにエサを与えてすし詰め状態で育てる例も見られますが、秋川牧園では自然の光や風が入る開放型の鶏舎で、1坪あたりの鶏の飼育数を35羽以下に制限した「薄飼い」を行っています。飼育を始めてから10日目以降の夜間は原則消灯し、自然な生活リズムを促します。このように鶏にストレスを与えず大切に飼育することが、鶏が健やかに育つことに繋がります。また養鶏において、飼育日数が45日前後で出荷することが一般的な中、60日以上かけてゆっくり育てています。そうすることで、程よい弾力でジューシーさがあり、鶏肉本来の旨味が感じられる美味しい肉質になっていきます。

鶏を健康に育てるための方法として、秋川牧園は鶏に与える飼料にもこだわっています。鶏を大きく早く育てるために動物由来の飼料を与える方法もある中で、秋川牧園ではとうもろこしや飼料用米、きなこや大豆かすなどを独自に配合した植物性飼料を使用しています。飼料の主原料であるとうもろこしは収穫後に農薬を使用していないものを用いているほか、とうもろこしや大豆は遺伝子組み換えの原料が混入しないように、分別生産流通管理された原料を使用しています。私たちが健康であるためには、命を繋いでくれている動植物たちが健康であることが重要と考え、「人が食べても大丈夫」をめざした飼料にこだわっています。

秋川牧園では、飼料用米の生産と利用を通じて、地域循環の仕組みをつくることにも挑戦しています。鶏のエサとなる飼料用米を作るために、休耕田を活用し再生する。そこに安全・安心な飼料を与えられた鶏の糞を発酵させ良質な堆肥を生み、その堆肥が飼料用米を栽培するために活用されるという、循環型農業を推進しています。また、循環型農業に取り組むことで日本の食料自給率の向上の担い手になることもめざしています。

目には見えない価値を大切にしてきた秋川牧園の食づくり。鶏に、人に、そして環境にやさしい方法で、食への想いを未来へ繋げていきます。