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アレルギー義務表示「くるみ」を追加し8品目に

加工食品の原材料に関するアレルギー表示はこれまで、卵や乳など7品目が義務化されていましたが、「くるみ」が追加されて8品目となりました。発症数が急増しているためです。注意しましょう。

消費量増え、発症例も急増

食物アレルギーは、体が特定のたんぱく質など(アレルゲン)を異物と認識してしまい、過剰に体を守ろうとして症状が出るものです。子どものころだけでなく、大人でも突然、今まで普通に食べていたもので症状が出ることがあります。重篤な場合には意識障害や血圧低下などのアナフィラキシーショックに見舞われ、亡くなる人もいます。

加工食品は原材料がわかりにくいため、「アレルギー表示制度」が設けられています。重篤度が高かったり発症数が多かったりするものが「特定原材料」に指定され、事業者は容器包装に特別に、表示しなければなりません(義務表示)。従来は7品目(えび、かに、小麦、そば、卵、乳、落花生)でしたが2023年3月、くるみが追加され8品目となりました。特定原材料ほどではないけれど発症者が一定数いる、というもの20品目は、「特定原材料に準ずるもの」として、表示が推奨されています(表参照)。

アレルギー表示の対象となっている品目

根拠規定 特定原材料等の名称 表示の義務
特定原材料 えび、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生(ピーナッツ) 義務
特定原材料に準ずるもの アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン 推奨(任意)

くるみが義務表示対象となったのは、発症数が急増したためです。消費者庁の実態調査(即時型症例数)によれば2012年度、発症数が40例で全体の1.4%を占め原因食物としては9位だったのですが、15年度は全体の1.6%で9位、18年度は5.2%で4位、21年度は7.6%で4位でした(上位は毎年度、1位鶏卵、2位牛乳、3位小麦)。ナッツブームにより消費量が増えたために発症数も増えた、と見られています。

そのため23年3月、表示が義務化されました。事業者が、現在の容器包装を使い切り新たに容器包装を作るのに時間を要するため、25年3月31日までは猶予期間です。同年4月1日以降は、事業者がくるみをアレルギー表示していなければ、食品表示法違反として罰せられます。猶予期間中、アレルギー表示としては容器包装に記載されていない場合も、くるみが使われていれば一般的な「原材料」としては表示されますので、よく見ましょう。

誰もが発症する可能性がある

なお、多くの人が、特定原材料や準ずるものになっている28品目以外の食品ではアレルギーを発症しない、と考えているのですが、それは間違い。28品目は発症数が多いため、特別な表示が求められているのです。消費者庁の全国実態調査では、100品目を超える食品で発症が報告されており、とくに近年は、マカダミアナッツなどナッツ類での発症が目立ちます。一方、「特定原材料に準ずるもの」となっているまつたけは、症例報告がありません。そのため、同庁は現在、専門家を集め表示対象の見直しを検討しています。

誰もが突然、アレルギーを発症する可能性があります。患者がアレルゲンを避けられるよう、温かく支える社会をめざしましょう。

PROFILE

松永 和紀さん写真

松永 和紀さん

食品の安全性や環境影響等を取材している科学ジャーナリスト。京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。毎日新聞社に記者として10年間勤めたのち独立。「メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学」(光文社新書)で科学ジャーナリスト賞2008を受賞。2021年7月より内閣府食品安全委員会委員(非常勤)。本記事は食品安全委員会の見解ではなく、個人の判断により執筆しています。

Ganbaranya(がんばらにゃ)2023年9月号より

#食

2023年9月