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病気を治す効果はない 機能性表示食品

紅麹を原料とした機能性表示食品で、死者が出るなど大きな健康被害が発生しています。原因は青かびが作る1物質に加え、紅麹と青かびが作る2物質とみられています。「抽出濃縮された成分を大量に含む食品」を「健康のために毎日食べる」という機能性表示食品の特徴が、これら毒性物質の大量摂取につながったようです。この事件を契機に改めて、機能性表示食品をはじめとする各種の健康食品の制度に関心が集まっています。法的な位置付けや違いなどについてご紹介しましょう。

国は審査していない

健康食品は、国の制度に基づき容器包装に機能性などを表示できる「保健機能食品」と、国は表示を認めていないのに消費者から健康に良さそうと受け止められている「その他健康食品」に分かれます。

健康食品の分類

出典:消費者庁リーフレット「健康食品5つの問題」

食品

一般食品

健康食品

保健機能食品

国の制度に基づき機能性などを表示

  • 特定保健用食品(通称トクホ)
  • 栄養機能食品(マークなし)
  • 機能性表示食品(マークなし)
その他健康食品

保健機能食品のような機能性などを表示できない

  • サプリメント
  • 栄養補助食品
  • 健康補助食品
  • 自然食品 など
医薬品

医薬部外品を含む

保健機能食品は、「特定保健用食品」「栄養機能食品」「機能性表示食品」の3種類があります。

特定保健用食品、いわゆるトクホは、国が個別製品ごとに安全性と有効性を審査し、有効性の表示を許可するもの。栄養機能食品は、ビタミンやミネラルなど20種類の栄養成分について国が基準を定め、その量が含まれた製品に事業者の責任で栄養効果を表示します。

機能性表示食品は、事業者がガイドラインに沿って安全性と機能性を自ら確認し消費者庁に届け出て、事業者の責任でパッケージに機能性を表示します。届出情報は消費者庁のウェブサイトで公表され、消費者自身がその情報を読む仕組み。国は審査や許可などをしていないのですが、消費者にはあまり理解されていませんでした。

また、機能性表示食品は健康な人を対象としており、病気の人が摂取するとむしろ有害になったり、医薬品との相互作用が生じたりするケースもあります。パッケージにも注意事項として書かれています。ところが、紅麹製品の問題では、多くの被害者が病気を持っていたのに摂取しており、制度が誤解を招いていた可能性があります。今回の問題を受け国は、事業者に健康被害情報の国への提供を義務付け、錠剤、カプセルなどサプリメント形状の機能性表示食品の製造にGMP(適正製造規範)を求めるなどの対応策を公表しています。

まずは食事をバランス良く

「その他健康食品」は国が認めておらず、機能性などは表示されません。法的な位置付けは米や肉、野菜など他の一般食品と変わりません。病気への効果を宣伝し警察などに摘発される食品がひんぱんに出ていますので、注意してください。

いずれにせよ、健康食品では病気は治せません。消費者が、自分の体に不足し補わなければならない成分を特定し、それを適切な量、摂取するのも容易ではないでしょう。また、事業者にとっても、有害な成分を含まないように原料や品質を管理して製造するのは簡単ではありません。国もまずは、「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを」と提唱しています。

PROFILE

松永 和紀さん写真

松永 和紀さん

食品の安全性や環境影響等を取材している科学ジャーナリスト。京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。毎日新聞社に記者として10年間勤めたのち独立。「メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学」(光文社新書)で科学ジャーナリスト賞2008を受賞。2021年7月より内閣府食品安全委員会委員(非常勤)。本記事は食品安全委員会の見解ではなく、個人の判断により執筆しています。

Ganbaranya(がんばらにゃ)2024年8月号より

#くらし

2024年8月