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フードファティズムに陥らないために・・・

フードファディズムという言葉を知っていますか?特定の食品や成分を食べれば病気を治せると信じたり、科学的な根拠もなく特定の食品を排除したりすることをフードファディズムと呼びます。
「がんを治す食品は……」と聞くことがありますが、そのような科学的根拠のある食品は見つかっていません。「玉ねぎが糖尿病を改善する」と情報が流れ、書籍も多数出版されたこともありました。しかし、高橋久仁子・群馬大学名誉教授が調べたところ、効果を持つ可能性のある成分が玉ねぎに含まれてはいるものの、玉ねぎを毎日50kg食べないと効かない量でした。

食情報には間違いがいっぱい

 これらは極端な例ですが、身近にも「あの食品は体に悪いから食べてはダメ。この食品は……」というふうに、「良い食品」と「悪い食品」に二分する情報がたくさんあります。しかし、そうした情報の多くは間違っています。食品はそれほど単純ではないのです。

 たとえば砂糖。よく使われる白い砂糖(上白糖)は漂白されており、茶色い砂糖は自然で栄養成分もいっぱい。だから子どもには茶色い砂糖を……。そう信じている人が多いのでは?しかし、砂糖は漂白されていません。

 砂糖は、サトウキビやサトウダイコン(てんさい)から作られます。これらは、砂糖の主成分である「ショ糖」を多く含みます。上白糖やグラニュー糖が白いのは、ショ糖の純度が非常に高いから。ショ糖の結晶は無色透明で光を乱反射するため真っ白に見えます。

 一方、茶色い三温糖は上白糖やグラニュー糖を取り出した後の糖みつを煮詰めて作るので、糖の一部が焦げて茶色のカラメルになっており茶色に見えます。

 黒砂糖は、サトウキビのジュースから不純物を取り除きながら煮詰めて固めたものなので、上白糖などに比べて純度が低くミネラル類やビタミン類は多め。しかし、野菜や肉などと比べれば微量です。てんさい糖も同じで、炭水化物以外の栄養摂取は期待できません。

主要栄養成分(100gあたり)

上白糖 黒砂糖 てんさい含蜜糖 ほうれん草(冬採り生)
エネルギー(kcal) 391 352 357 18
炭水化物(g) 99.3 90.3 96.9 3.1
カルシウム(mg) 1 240 Tr 49
カリウム(mg) 2 1100 27 690
マグネシウム(mg) Tr 31 0 69
リン(mg) Tr 31 1 47
(mg) Tr 4.7 0.1 2.0
β-カロテン当量(μg) (0) 13 4200
葉酸(μg) (0) 10 1 210

(Trは量を測れないが微量を検出しており、(0)は推定ゼロの意味)

てんさい含蜜糖は通常、てんさい糖とも呼ばれている。黒砂糖やてんさい含蜜糖は、ミネラルやビタミン類などの含有量は100gあたりで比較するとほうれん草などと同等のものもあるが、100gを摂取すると糖分の取りすぎとなり、ミネラルやビタミン類などの摂取源としては勧められない。


出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年



 結局のところ、砂糖の種類に良し悪しはなく、その風味や使い勝手など好みで使い分ければ良いのです。

バランス良く食べよう

 こんなふうに、私たちは聞きかじりの情報と思い込みでなんとなく、食品の良し悪しを語りがちです。玉ねぎの話で触れた高橋名誉教授は、日本でのフードファディズム研究の第一人者としてさまざまな事例を調べてきました。そのうえで、「休養や運動の不足、不摂生な生活習慣のツケを帳消しにして、それさえ食べれば健康問題を解決してくれるというマジックフーズはなく、逆にそれを食べると病気になるという悪魔フーズもありません」と話します。多種類の食品をバランス良く食べることが大切です。

PROFILE 松永 和紀さん写真

松永 和紀さん

食品の安全性や環境影響等を取材している科学ジャーナリスト。京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。毎日新聞社に記者として10年間勤めたのち独立。「メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学」(光文社新書)で科学ジャーナリスト賞2008を受賞。2021年7月より内閣府食品安全委員会委員(非常勤)。本記事は食品安全委員会の見解ではなく、個人の判断により執筆しています。

Ganbaranya(がんばらにゃ)2024年2月号より

#食

2024年2月